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抗体検査
私が抗体検査をしたのは、入院中の病院でした
2000年9月に体調の不良から一度入院したことのある病院にその検査と治療のために入院をしました
熱が続き、白血球の値が3000を割り込んでいたのですが、その原因がわからず、レントゲン、CTスキャン、MRI、胃カメラ、ルンバールなどの検査をしてもこれといった結果は出ませんでした
ただ、胃カメラの検査では、食道と胃に白い潰瘍のようなものがあり、それを採取したところカビのような物だという結果が出ました
入院の日から3週間、熱と咳が続き「いったいどうなっているんだろう」と思っていた10月6日金曜日、 ちょうど、お昼の食事がもうそろそろかな、とベッドの上で待っていると、主治医がひょっこりとドアから顔だけ出して
「ちょっと、はなしがあるんだけどぉ、向こうの部屋に行こうか」と言ってきました
病状についての話でもするのかなと、軽い気持ちで廊下を歩いて行くと、いつもの看護婦さんたちがどこか作ったような表情をしているのに気がつきました
?・・・
主治医についていくと、話をするはずの向こうの部屋とは、ナースセンターのことで、始めて入るその部屋は病室と違ってどこか生き生きとした感じが伝わってきました
医師に促されて席につくと、血液の専門医、看護主任と担当看護婦も同席してきました
私の前の4人はどこか構えているようで、すこし表情が硬かったように覚えています
「ええとね・・・」
主治医のそんな一言はこれから始まる長い道のりのことなどみじんも感じさせないくらい軽やかな語調で、入院からの経過、検査結果、医師による病状と患者に対する考えなどに進み、手もとの書類が新しい物になったところで、いよいよ本題へと入っていきました
「…これだけ検査をしてみても、これといった答えが導き出されないとなると、もう一歩進んだ検査をしてみようと思うんです。HIVって知ってる?」
「ああ…、エイズですね」
私はこのとき始めてこの病気との接点に立った気がしました
「HIV」と聞いて、わけはわからず納得したような変な気分になったのです
ひとつ、小さなため息をついたあと、息苦しかったはずの胸に大きく息を吸って吐き出すと、なにかつかえていたものがどこかに消えうせ、自然と呼吸が楽になりました
「ああ、そうかもしれませんね」
これも自然と口から出てきた言葉です
そんな私を見ていて、医師やそのほか、ナースセンターにいた全員がほっとしていたのも感じられました
「最善の方法のひとつとしてこの検査をすることをすすめます」
自分でもまったくその通りだと思い、承諾書に署名しました
「なにか抵抗はある?」
看護主任が私の顔をのぞき込むようにして聞いてきました
「いいえ」
リスクを覚悟の上でのことは、自然の成り行きのように私の中でとらえられていました
検査のための採血は医師が行いました
「やっぱり先生だと痛くないですね」
つい私が口を滑らせ言ってしまったことに目の前の4人は苦笑していたようでした
「そうね、看護婦は下手だからねぇ」
看護主任がそう付け加え、和んだちょっとの合間に、私の血液は検査室へと送られて行きました
結果がでるまでの2時間は、医師が付き添い、交代に担当看護婦が付き添い、昼食をとってからも常に誰かがそばにいてくれました
その間は何を話すでもなく誰かに付き添われ4人部屋の片隅で過ごしていたように覚えています
「ああ、エイズかあ…」
検査結果を待つ間はエイズ検査をしたと言う現実について、そのようにしか思っていないようでした
きっと自分はエイズじゃない、と言うことはまったく考えてもいなかったように覚えているのですが、そのときには既にHIV脳症が出ていたようなので、そんな感じではなかったかなと言うくらいにしか思い出せません
「エイズ検査をする」と言う決心はその病気であると薄々認めていたのかもしれません
検査結果が出たとき、医師が私のところにやってきて「さっきの部屋まで行こうか」とまた迎えにきました
そのときは先程とは違って、病室からナースセンターまで連れ立っていきました
「先生、やっぱりでしたか?」2、3歩進んで何気なくたずねると
「うん、やっぱり」と答えが返ってきました
この言葉を聞いて何かが気持ちにぶつかったような感じがして立ち止まると、医師は私の脇に腕をいれ「しっかりして」と気合のこもった声とともに私の肩を抱えナースセンターまで支えていってくれました
それからは抗体検査の結果の詳細とその病気の説明、病院の転院、家族の問題などを話し合い、その日のうちに全ての手続きまで完了しました
転院の理由は、この病院では治療もケアーも経験がないので専門病院に転院したほうが良い選択になるといわれたからです
このとき、CD4の値は「2」でした
この日、調子の悪かったそれまでの時間がうそのように活気のあるアクティヴな1日になったようで、歩くのも息絶え絶えになっていたはずの自分が、深呼吸までしていました
久しぶりにやる気が出たのかもしれません
別の世界が開ける前触れのようなもので、やっと進む道が見えたような気もしたのです
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